林原
極端に太った女性が、男と一緒にピクニックを楽しんでいる。夫か愛人か父親かもわからない。もしかしたら、たまたま身体の陰に隠れて見えないが、赤ん坊もいる。気持ち良く美しい森の中ではなく、荒涼とした風景、寒々とした荒れ地だ。遠景には樹木など一本も生えていない小さな山があり、山裾の向こう側へ、廃線になった貨物列車の線路が、カーブを描きながら消えている。なだらかな勾配を利用して、極端に太ったカップルが休日を楽しんでいる。僕は旅の途中で、偶然にもこのカップルに出会ったのだ。澄んだ青空、カラフルな敷物の上には、ワインのグラスや果物が散らばっている。なぜこんな場所でピクニックをしているのだろうと思う間もなく、上半身を起こした男と目が合った。夢の中の出来事か現実かわからない。何もかも夢のようであり、いや、多分、何もかも夢なのだ。
こんな情景が、撮影する直前に抱いていたイメージだった。(『感性のバケモノになりたい』より一部抜粋)