1980
雑誌流行通信のために写真を撮るのは楽しみだった。編集長の二川昭子さんは率先してロケバスの車内でスタッフにランチを配ったり、手作り感いっぱいで、編集者の皆さんもいい雑誌を作りたいという気持ちが溢れていたからだ。
この作品は確か、江木良彦さんの着物と着付けがメインだった。ノスタルジックな世界を念頭に、私の頭の中に「里帰り」のイメージがあった。旦那さんの役は編集者の一人ではなかったか。記憶違いかもしれない。
上野、谷中、草津などへ行き、記憶の断片を元に構成していった。
この当時は(今も変わらないが)、どう言葉で説明したらよいかわからないのだが、いわゆる形にならないダサい瞬間を作り出し、その時生じるファッション写真の割れ目を作りたかった。象徴的に決まった瞬間は時間とともに見慣れて溶解してしまうが、決まらないままフリーズさせると、いつ解凍してもビビッドに動き出すからだ。
HM→長谷泰雄、着付け→江木良彦、M→関谷のり子