「四谷シモン」
「四谷シモン」

1972

状況劇場多彩な役者の中でも最高に妖艶で魅力的な女形から、人形作家として出発する四谷シモンさんを被写体に、10人の写真家が写真を撮ることになった。
私は前年に独立したばかりの駆け出し写真家だったが、幸いなことに末席に参加させていただいた。

状況劇場時代のシモンさんは本当に美しかった。
役者時代を超えて新しい魅力を引き出すのは、自分の力では難しいと頭を悩ませていた。そのため、シモンさんの肉体に過酷な条件を与えてみたらどう変化するのか見たいと思った。
「痛み」「苦しみ」「笑い」「哀しみ」の4つのアイデアを準備した。簡単に言えば拷問みたいなもの。例えどんな条件であろうと美しくありたいと願うシモンさんの美意識に賭けた。
展示した写真はその内の「哀しみ」と「苦しみ」です。
「哀しみ」は常に勃起し続ける男。「苦しみ」は引力に逆らい続ける男を想定し、部屋の中でシモンさんを逆さ吊りにした。その上で「ポケットに手を突っ込み口笛を吹いてください」と注文つけた。
完成後、上下逆さまにして鑑賞する。

撮影後シモンさんは「ジュウモンジ、おまえさんおかしいよ」と笑っていた。
ちなみに他の二つですが、「笑い」は頬を両方から引っ張って皿の上の饅頭がどうしても食せない状態、「痛み」はプロレスの技をかけた。他には全裸にしたシモンさんの全身をサランラップで巻き、道端に放り出して水をかけた。

M→四谷シモン

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