1980
雑誌『流行通信』からファッション撮影の依頼がきた。
条件はマツダミツヒロ、イッセイミヤケ、コムデギャルソン、ヨウジヤマモトの衣装で撮る、だった。この4人のデザイナーのうち、一生さんの服以外はそれまでに撮ったことがなかった。
ファッション写真に於ける「かっこいい」とはなんだろうかを考えていた。
当時ファッション写真の第一人者といえば、リチャード・アベドンだろう。ストロボを使い、動く女性の一瞬をローアングルから衒いなく撮り下ろす。堂々としたファッションの王道を行くような写真だ。
私は私の経験から生まれ出るものしか撮れないので、アベドン風とは異なった写真になる、例えファッションだろうと広告だろうと同じこと。生きて歩いている地が違うのだから、アベドンみたいに撮っても仕方ないじゃないかと思っていた。
それでも「かっこいい」写真を撮りたい。
自分が思う「かっこいい」は、メディアがなんであれ結果的に自分が生きている時代を削りとった痕跡が見える写真だ。
人と人との出会いから生まれる個性や意識のズレが、日常からはみ出るように願っていた。
言い方を変えるとファッション撮影を通して虚構と日常とがすれ違う現場を作りたかった。
1日のロケーションで出会える人や場所に限りはあるが、出会い頭の戸惑いを見逃すまいと思っていた。
展示した作品は上から、イッセイミヤケ、ヨウジヤマモト、ヨウジヤマモトです。
衣装→イッセイミヤケ、ヨウジヤマモト、HM→Yasuo Hase、M→Miyuki Kondo、Toshiko Shirai.