1978
クライアントからの注文で、カーコンポの商品そのものを使って広告を作る。
私は広告を考える専門家ではないが、データに基づいて展開していく広告のやり方に疑問を感じていた。あくまでも作り手が対象として考えなければならないのは大衆という括り方ではなく、好みの違う具体的な消費者一人一人である、と考えていた。完成した広告に好き嫌いがあっていい。だからこそインパクトが生まれる。
気持ちよくカーコンポから響き出る音楽を聴く男、をテーマに、どうすればビジュアルにインパクトを与えられるか考えていた。
「逸脱する」、これしかない。
好きな音楽を聴いている時、日常から逸脱して流れる音に身を任せる快感。何もかも忘れて漂う気持ちよさ。
前後部が断ち切れ、自動車とも言えない自動車に乗って砂漠に浮かぶ男を想定した。
全ての目的から離れていい、広告というジャンルからも明確に逸脱したかった。
CD→金岩秀和、C→植村潤吉、AD→高田務、浅葉克己、阪井肇、A→現代工房、ST→北村道子、M→グレッグ