1973
1972年当時、資生堂デザイナー太田和彦さんから「シフォネット」という商品があります、雑誌広告のための撮影をやりませんか、と連絡があった。『カメラ毎日』『anan 』に私が発表した写真を見て、注目してくれたのだろう。
資生堂の広告といえば、撮影は横須賀功光さんの仕事が圧倒的だった。ほとんど独壇場とも言える活躍だったので、もし自分がやることになれば違う世界観に挑戦してみたかった。
メイクアップした女性の美しい顔から、もう少しアングルを引いて、美しい女性がいる不思議な場を作り出せないかと考えた。資生堂の基礎化粧品を使ってメイクすれば美しくなるのは必然だから、と開き直った結果だった。
今まで見たこともないインパクトある広告写真を考えてみたかった。
太田さんと二人でビジュアルのアイデアを考え、雑誌広告のためのコピーは小野田隆雄さんが書いた。
掲載した写真はシフォネットシリーズ広告の一つで、マジシャン初代引田天功さんの空中浮揚からヒントを得た。
当時六本木にあった引田さんの事務所を訪ね率直に空中浮揚の種明かしを教えてください、と申し込んだら、微笑みながら「教えると思うかい?」と即答で断られた。そのかわり会話のやりとりから人体を空中に浮かす独自の方法を思いついた。
AD→水野卓史、D→太田和彦、C→小野田隆雄、ST→牧野由里子、M→内海ジュン