1971
1971年6月、雑誌『anan』より撮影の依頼があった。写真家として独立後初めての仕事だったので、私には特別な思いが残っている。
撮影場所は軽井沢の旧三笠ホテルに決めた。
三宅一生さんのシルクのドレスを着たモデル浜美樹さんをソファに座らせ、「ふてぶてしい顔で横たわってください」と声をかけた。私がプロの写真家としてデビューした初めての撮影が始まった。太陽光が網戸の緑色を通過して室内に届き、美しい効果を発揮した。
ソファ、通路、白くて古いタイルのバスルーム、水がないプールなどで撮影した。
最後の最後に、着ていた一生さんのドレスを脱いでもらい、ザブザブ水に浸け、ずぶ濡れのドレスを裏庭に張ってあった紐に吊るした。
ファッション写真は人々に夢を与える、どちらかといえば虚構の世界に属すると思われるが、今この時この場の現実に属してこそファッションに価値が与えられる、と咄嗟に思いついた。それに、脱いだ服でもファッションになるのかどうか、試してみたかった。
後日、現像した写真を見た三宅一生さんから「シルクのドレスを洗濯しちゃうんだからねー、じゅーじ君、いいよ、とても面白いよ」と感想をいただいた。そのせいもあったのだろうか、見開き2ページだった予定が掲載された時は10ページに増えていた。
衣装→三宅一生、H→伊藤五郎、M→木村シゲル
モデル→浜美樹、編集→椎根和